カンテラテンカ

分水嶺 1

 タンジェリン・タンゴは、山に生きてきた。
 深い山中。空気は蒼く、まだ日も高いというのに、山林に阻まれて陽は落ちず足元はわずかに暗い。
 木々と草陰に身を隠し、呼吸のわずかな音すら立てず、タンジェは”その時"を待っている。
 一般に、森の中で野生動物に遭遇するのは危険だ。やつらは遠ざけるべきで、そうするために人為的な音は出したほうがいい。
 だが――"狩る側"ならば、話は別だ。
 音も、気配も消して、自然の中に沈み、ただ、待つ。それが"狩り"の不文律である。

 静謐を裂く。
 けたたましく勇ましい、犬の吠声だ。
 タンジェは顔を上げた。視線だけで木々の隙間を縫う。瞬間、地面を蹴って飛び出した。
 吠え立てられて逃げ込んだ"獲物"と駆けこむタンジェとがぴったり交差し、遭遇する。

 視界に飛び込む、3mはあろうかというグリズリー。
「――喰らいやがれッ!!」
 タンジェはほとんど不意打ちの形で、迷わずその巨体に戦斧を叩きこんだ。

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