ベルベルント防衛戦 1
ベルベルントの歴史を紐解くと、驚くほど争いと無縁であったことが分かる。
ベルベルントの地下には今も現役の下水道が街中に張り巡らされているが、これは古代文明時代に造られたものだ。その古代文明が何らかの理由で滅びてからこっち、ベルベルントが戦争に巻き込まれたとか、あるいは戦勝国だのその逆だのになったとか、そういう記録はいっさいない。
交易都市としてあらゆる人、物、事を内包するベルベルントは、世界に対して中立を保ってきた。
世界のどの国にとっても交易の"要"。だから、"不可侵"。
それが、この交易都市に約束された安全、の、はずだった。
不躾な侵略者どもの宣戦布告は、聖ミゼリカ教会の尖塔の破壊をもって行われた。
轟音を立てて地面に降り注ぐ信仰のシンボル。そこでようやく人々は、ベルベルントの壁の外から迫る悪魔の軍勢に気が付いたのだ。
歴史が、変わろうとしていた。
ベルベルントに軍はない。かろうじて騎士団がある程度で、それすら実戦にはさほど慣れぬ治安維持隊だ。
だが、ベルベルント自身がその慈悲と寛容で得ていたものの中には、冒険と戦闘を生業とする多くの者たちがあった。
冒険者。ベルベルント以外に行き場を失い、ベルベルントで居場所を見つけ、ベルベルントに生かされた者たち。
タンジェリン・タンゴもそうだ。
復讐を志し、冒険者を稼業に決め、訪れた交易都市ベルベルント。今のタンジェが帰る場所。
この街を守り抜く。そのために戦うことに、一片の躊躇いもありはしない。
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