時計塔の決戦 1
戦いはずいぶん長引いていた。
悪魔の数が、減らない。次から次へとやってくる悪魔たちは、ベルベルントを破壊し、冒険者と戦い、殺される。あるいは冒険者や市民を殺すものもいて、被害は広がるばかり。倒壊した建物、火災、死体。そしてまた次にやってきた悪魔が、ベルベルントを破壊し、冒険者と戦い――。
もはや冒険者たちが疲れ果てるまで――すなわち、ベルベルントが陥落するまで――キリがないようにも思えるこの戦争だが、終わらせる方法がないわけじゃない。サナギの送還術式の完成を待てば、いずれは。
ベルベルントを回っている間に、サナギが無事に騎士団詰所に到着しているのは聞いていた。うまくすればじきにサナギは送還術式を完成させるはずだ――だが、いつになるか分からない。送還が成功するかも、分からない。
だから、俺――タンジェリン・タンゴ――は、そんなものを待つ気はもうなかった。
ラヒズを見つけてぶちのめし、<天界墜とし>を終了させる。
しかし問題が一つ。とうのラヒズの居場所が分からない。
だが朗報は唐突に訪れた。それは本日何回目かの盗賊ギルドを訪れたとき、各所の情報とともにブルースからもたらされた。
「そうだ。ラヒズを見かけた、という情報があったぞ」
「なんだと!!」
俺は身を乗り出した。
「どこにいるって!?」
「と、時計塔だ。入っていくのを見たってやつがいる」
俺の剣幕に押されてブルースが若干引いている。
時計塔! ベルベルントの中央に建つ、聖ミゼリカ教会の尖塔と対をなす巨大建築だ。
「よし! ありがとよ!!」
「お、おい。お前、一人で行くのか?」
すぐさま出ていこうとする俺に、ブルースの声がかかる。俺は振り向いた。
「当たり前だろ! 時計塔の中なんざ大して広くねえ。複数人で行っても仕方ねえよ」
「……」
ブルースは少し、何を言うか悩んでいる様子だったが、結局口から出たのはありきたりな、
「気をつけろよ」
という言葉だった。俺は頷いて、盗賊ギルドを飛び出す。
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