カンテラテンカ

暗中ディスカバー 1

 冒険者への依頼というのは多岐に渡る。
 メジャーなもので言えば妖魔退治だったり、商隊などの護衛だったり。タンジェたち黒曜一行が先日受けた大熊ノワケ退治においては、相手は妖魔ではなく獣であったが、害獣退治だって少なくない依頼だ。それから人・ペット探し、変わり種では殺人事件の解決への助力なんていう、調査がメインになる依頼もある。はたまた大掃除の手伝いや道具屋の店番など、人々の日常に根ざす些細な仕事だって持ち込まれることがある。
 依頼頻度の多寡でだけ見れば、今回の依頼はマイナー寄りだと言えるだろう。黒曜一行は、遺跡発掘の手伝いを引き受けていた。
 ことは5日前。星数えの夜会の掲示板に貼られた依頼書を二度見したサナギは、すぐさまそれをはぎ取り、黒曜の前に差し出した。黒曜は一行の実力に見合わない依頼は決して受けない男だったが、今回の依頼書には「丁寧な仕事をしてくれるなら素人でも可」との記載があり、戦闘などの危険は少なく、報酬も悪くない、と、条件が良かった。唯一の欠点は拘束時間が長いことで、実に二週間近くを依頼人と過ごすことになる。
「何言ってるの!」
 拘束時間が長い点を緑玉に指摘されたサナギは大声を出した。とはいえ咎めている様子ではなく、むしろはしゃいだ調子だった。サナギはその声量のまま続けた。
「依頼主はトキ・ツーマッハだよ!? 『墓穴の標亭』の!」
「誰だよ……」
 と、横でタンジェが呟くと、サナギがぐるりとこちらを向いたので、余計なことを言った、とタンジェは直感した。サナギはタンジェに詰め寄るように身を乗り出すと、
「ご存じない!?」
「ご、ご存じねえよ」
「『墓穴の標亭』といえば、お酒と冷製料理がおいしい宿だけど……あそこの真の名物は"怪談話"さ!」
 普段通りの饒舌さに興奮を乗せて語り始める。
「俺もたまに行くんだよ。墓穴の標亭――通称『墓標亭』は、俺たちの星数えの夜会と同様、冒険者宿なんだけれど。所属冒険者の中に『語り部』がいるんだ。要するに、ストーリーテリングをするテラーだね。『墓標』から『死』や『恐怖』を連想して、語り部が得意とする物語りもだいたいは怪談話さ。トキ・ツーマッハはその中でも抜群に話がうまい!」
 俺は彼のファンなんだよ、とサナギが目を輝かせるのを、一同はごく落ち着いた――ともすれば冷めた――態度で受け止めている。
「そのトキ・ツーマッハさんは、語り部で冒険者なのに、何故こんな依頼を?」
 と、まともなことを尋ねたのはパーシィで、サナギは今度はそちらに向くと、こう即答した。
「彼は本業は考古学・民俗学を専門にする学者なのさ。だから彼の怪談も実に文化的で、おもしろいんだよ」
「はあ。そういう冒険者もいるんだな」
 どうやらパーシィは考古学だの民俗学だのにピンとこないらしく――タンジェだって学術の内容はまったく知らない――雑な感想を返した。
 とにかくさ、とサナギは黒曜に、
「彼と話せる機会が2週間もなんて、素敵な話さ! ぜひ受けようよ。少なくとも、今の俺たちの手に負えないような依頼じゃないはずだ」
 改めてこの依頼を強く推した。

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